わたしたちの資本主義を定義しよう
1日10分のオンライン講座。
公益資本主義を学び、実践に活かす。
未来は不安ですか?
効率化、成果、利益。日々の努力や自己実現。どれも大切です。
でも、それだけでは不安が消えないのは、なぜでしょうか。
これまでの「当たり前」が、変わってきているからです。
たとえば、「日本=中流階級」の国か。
実はそうなっていません。物価上昇を除いた実質賃金は、30年前から10%以上も低いままです。
資本主義は本来、暮らしを良くしていくためのものでした。
いま、その仕組みとわたしたちの暮らしとが、ずれ始めています。
だからこそ、資本主義とは何か。会社とは何か。利益とは何か。
当たり前と思っている概念を、ひもときなおしていく必要があります。
自分の利益だけではなく、公益を増やしていくために。
公益資本主義アカデミーへ、ようこそ。
「今だけ・自分だけ・金だけ」
そのずれは、わたしたちが判断するときの「物差し」に表れています。
気づかないうちに、3つの「だけ」が当たり前になっていないでしょうか。
失われた30年の間に、「どうせ良くならない」という感覚が染みつきました。失敗するかもしれない未来よりも、確実な今を選択する。成長を止める原因となります。
全体のパイが広がらない中では、誰かの取り分が増えれば、他の誰かの取り分が減ります。だから、まず自分の利益を確保する。それを、効率化、と呼んでいます。
お金で測れないものは、後回しにされます。お金にならないことは、選ばれなくなります。数字ばかりをみるようになると、現場感覚が失われていきます。
わたしたちの豊かさを実現する資本主義へ
成長と分配の循環を設計していく
DEFINITION公益とは、
私たちおよび私たちの子孫の
経済的・精神的な豊かさ
資本主義の弊害。
それは、富める人が富んでいく構造を持っていることです。
なぜそうなるか。
利益の定義が、自分の利益、だからです。
公益資本主義の目的は「健康で豊かな人々をつくりだす」こと。
そのための主体が、会社です。
自社の利益だけではなく、会社を支える「社中」それぞれの利益の総和、つまり公益を増やしていくことを考える。
今だけではなく、将来につながる利益を考える。
そうした、成長と分配の循環を設計していくのが、公益資本主義です。
プログラム構成
当たり前を疑う。
それが本アカデミーの出発点です。経営、経済、会計などの知識がなくても大丈夫です。
利益とは何か。資本とは何か。
ふだん何気なく使っている言葉の概念から、ひもといていきます。
資本主義は、ひとつではありません。
こうした学びを通じて、「わたしたちの資本主義」を、自分の言葉で定義していきます。
SECTION A・全10回
250年の資本主義の流れを、6人の思想家とともにたどります。時代ごとの資本主義の定義の移り変わりをみていきます。
SECTION B・全10回
原 丈人さんが、公益資本主義を提唱した原点。そして、会社・利益・生産性など、コアとなる概念を捉え直していきます。
SECTION C・全10回
そもそも「資本」とは何でしょうか。ROE、自社株買い、人的資本など。資本市場と会社の関係について考えていきます。
SECTION D・全10回
経済が回る。その意味することを公益資本主義で解きなおしていきます。その先に、少子高齢化へ向かう社会の姿を考えていきます。
SECTION E・全10回
ここまでの学びをもとに、資本主義を、あなたはどう使いたいのか。自分の言葉で定義していきます。それが修了課題です。
セクションA-1
~産業革命の混沌から「市場の法則」を言語化した男~
アダム・スミスが登場する以前、18世紀のイギリス経済を支配していたのは「重商主義」というパラダイムでした。当時の経済は国王や貴族、そして特権を与えられた一部の商人によって管理されていました。
経済とは、絶対的な権威を持つ国家が主導する戦いでした。国王は特許状を与えて商人を囲い込み、強力な艦隊が海を渡って植民地から富を収奪する。 金庫に積み上がる金銀こそが国力であり、他国の損失こそが自国の利益となる冷徹な「ゼロサムゲーム」。それが当時の常識であり、正義でした。
しかし、その堅牢に見えた支配構造の足元で、地響きのような変化が始まっていました。
きっかけは、ジェームズ・ワットらによる蒸気機関です。

石炭を燃やし、白い蒸気を吐き出しながらピストンを動かすその巨大な鉄の塊は、人類が初めて手にした「疲れを知らない動力」でした。
この轟音と共に、世界のパワーバランスは音を立てて崩れ始めます。富の源泉は、王室の認可を受けた貿易船から、 煤煙にまみれた工場へと静かに、しかし確実に移動し始めていたのです。権威が支配する秩序と、新たな力が生み出すカオス。 その狭間で世界は揺れ動いていました。
アダム・スミスがペンを執ったのは、まさに世界が古い殻を破ろうとしていた時代でした。まずは、彼が生きた時代の事実関係を整理します。
教科書では「産業革命=技術の進歩」と綺麗に語られますが、当時の人々にとって、それは理解不能な「混沌(カオス)」そのものでした。
この混沌を前にして、多くの知識人は「昔の秩序(農業社会やギルド)に戻すべきだ」と嘆くか、「国家がもっと厳しく管理すべきだ」と唱えました。
しかし、スミスだけは違いました。
ここで重要な補助線となるのが、一世代前の科学者アイザック・ニュートン(1642-1727)の存在です。スミス(1723-1790)が3歳のときに世を去っており、直接の面識はありません。
それでもスミスは、ニュートン力学に強い影響を受けていました。初期の論考『天文学史』では、ニュートンの体系を最大級の言葉で讃えています。「神が創造した自然界に『万有引力』という普遍的な法則があるように、 人間社会にもまた、見えざる『法則』が働いているはずだ」。そう彼は信じていました。
彼は、一見無秩序に見える工場の煙と人々の喧騒の中に、ある種の美しい「法則」が自生していることに気づきました。 彼にとって『国富論』とは、経済政策の提言書である以前に、人間社会を動かす隠された物理法則(エコノミクス)を解き明かす、科学的な挑戦だったのです。
セクションB-1
〜格差と分断を乗り越えていくために
経済学者トマ・ピケティは膨大なデータをもとに、資本主義というシステムが本質的に内包する「抗えない事実」を提示しました。それが「r > g」でしたね。資本収益率(r)が経済成長率(g)を、ほぼ常に上回り続ける。
その結果として、現代の資本主義は、世界の各地で2つの大きな病を引き起こしています。
「格差の拡大」と「社会の分断」です。
この病は、現代のどの国の研究機関も治す術を見つけられていません。病状は悪化の一途をたどり、それは国内だけではなく、世界の分断の火種にもなっています。
「公益資本主義」を、原 丈人(はらじょうじ)が提唱したのは、今から20年ほど前。それは、資本主義の持つ引力が、もたらす結果を、彼が予見していたからです。
「豊かな中間層」をつくるために、資本主義を用いること。それが公益資本主義。
ここから始まるセクション Bでは、公益資本主義の基本的な考え方と、その視点で経済社会をどう捉えていくか、についてみていきます。
本来、資本主義というのは、人々を豊かにするためのものです。つまり、大切なのは「実体経済の成長(g)」です。しかし、資本(r)の方が成長するスピードは速い。 だとすれば、その資本(r)を、実体経済(g)の成長を牽引する力としてどう使っていくのか、その考え方やルールのアップデートが必要となります。
「成長と分配の循環」をつくるために、会社を経営すること。それが公益資本主義。
アダム・スミスは250年前、「市場」が健全に機能するための絶対条件として、人間同士の「共感」や「公正な競争」という道徳的な信頼の土台を挙げていました。利益が、一部の人たちの間で回るものになってしまっては、社会全体の共感は薄まり、分断は深まり、その社会そのものが不安定になる。それは、当時から指摘されていたことだと言えます。
わかっていても止められない。そこに資本主義の持つ引力のおそろしさがあります。一方で、それが資本主義の問題だと明確になっているのであれば、変えていけるはず。
そのために、「公益」とはなにかについて、みなさんと考えていきたいのです。
さて、このB-1では、公益資本主義のコア概念について学んでいきます。その前に、まずはその提唱者である原 丈人が、なぜ、公益資本主義にたどり着いたのか。その原点からみていくことにしましょう。
公益資本主義の種は、原 丈人の少年時代の原体験に生まれています。
原 丈人の父・原 信太郎は、ケタ外れの鉄道マニアでした。世界中の鉄道を体験した信太郎ですが、その関心の先は「動く鉄道模型」にありました。手造りした車両は1500両。世界から集めた4500両と合わせると6000両にのぼり、そこから選りすぐられた約1000両が、横浜にある「原鉄道模型博物館」で展示され、その一部が今も走り続けています。
戦前、まだ10代だった信太郎は自らの鉄道模型の世界を「シャングリラ(理想郷)レール」と名付けました。日本が戦争へと突き進むなか、彼の模型の世界では、ソ連、中国、欧州、アメリカと、国境を越えてあらゆる国の車両が連結して走っていたのです。
「技術は人を幸せにするためにある。ルールは、他人から押し付けられるものではなく、自分たちで作るものだ」
父のこの徹底した「独立自尊」の精神と、国境を越えた「共生」の視点が、原 丈人の精神的なバックボーンとなったのです。
冷戦真っ只中の1960年代、まだ日本に冷房が普及していなかった頃の話です。
当時、事務用品メーカーの技術課長だった父・信太郎は、会社にクーラーを導入することを決断しました。普通なら社長室や役員室から入れるところですが、彼は役員の反対を押し切り、真っ先に「工場の現場」へ導入したのです。
重役たちは激怒しました。「君は経営者の味方か?労働者の味方か?」と。
「一番暑いところで汗を流しているのは現場の人間だ。暑さで気が散れば怪我をする。汗が紙に落ちれば帳簿が不良品になる。現場が快適になれば、事故は減り、品質は上がり、結果として会社は儲かる。これは会社全体を良くするための投資なんだ」
工場の労働環境の改善により、実際に歩留まりは高まり、生産性は向上したそうです。この「現場を大事にし、中長期的な視点で全体を捉える」という姿勢。これこそが、後の「社中(しゃちゅう)」という概念の原型となります。
セクションC-1
〜財務諸表をめぐる<資本の旅>へ
少し、意地悪な質問から始めましょう。
あなたの会社のホームページに、「資本金 1億円」と書かれていたとします。では、この1億円は、誰のものでしょうか。
「株主が出資したのだから、株主のもの」。そう答えたくなります。けれど、その株主でさえ、会社が続く限り「返してくれ」とは言えません。かといって「会社のもの」と言い切ると、株主から怒られますよね。なにか座りが悪い感じがしませんか。
質問を変えてみましょう。あなたのライバル会社が、「資本金 1000億円」だったとします。この会社は、お金持ちなのでしょうか。巨大企業だと思ってよいのでしょうか。
そうとは限りませんよね。手元に1000億円の現金があるとは限りません。そのお金は、工場や設備など、何かの目的のためにすでに姿を変えているはず。資本金の大きさは、その会社の財政的な豊かさを、表してはいないのです。
この違和感は、どこから起きてくるのでしょうか。その原因は、貸借対照表の構成にあります。左側(借方)は「資産」、会社がいま実際に持っているモノやお金。右側(貸方)は「負債・資本」、借入金や社債、そして資本金、剰余金などが並びます。左右は常に一致することから「バランスシート」と呼ばれます。
右下に置かれたハコが「資本」で、正式には「純資産」と呼ばれます。この「資本」というハコが、なかなかの曲者なのです。

資本金1億円は誰のものか。資本金1000億円の会社はお金持ちなのか。私たちが、つまずきやすいのは、まさにこのハコの読み方です。ときに都合の良い解釈も生まれてきます。
「資本とは、誰のものか」。この問いを、公益資本主義の視点で捉え直していく。
このセクションCでは、「会社と資本」をテーマに、ふだん何気なく使っている「概念」を、会計の構造から丁寧に読み解いていきます。まず最初は、そのものズバリ「資本」です。
富と資本の違いは何だと思いますか。
「資本(Capital)」の語源は、ラテン語の「caput(カプット)」、日本語に直せば「頭」です。中世ヨーロッパでは牛や羊を「頭数」で数え、その頭数が「富(Wealth)」の象徴でした。この語源が示す通り、「資本」という言葉はもともと「蓄積された財産(富)」のことでした。
しかし17世紀、ある革命的な発明が、資本の意味を根本から変えます。株式会社の誕生です。
それ以前、海外貿易は「一航海完結型」でした。インドへの船が出発するたびに出資者を募り、船が戻ってきたら利益を分配して解散する。リスクを共有し、リターンを分け合う形です。しかし、ヨーロッパとインドを結んで、交易を増やしていくためには、現地に商館を建て、倉庫を作り、港を整備しなければならない。一回の航海で回収できる額を超えた、巨大な固定投資が必要となる。
そこで17世紀のオランダ東インド会社(VOC・1602年設立)が採用した革命的なスキームが、「資本の永続化」です。

「出資したお金は、もう返さない。その代わりに「株式」を渡す。株式は自由に売れるから、換金したければ市場で売ればいい。」
これが株式会社というスキームの誕生です。出資者は「自分の富(資産)」を出したが、会社に移転した瞬間、それは「会社の元手(資本)」になる。ここから、「富」と「資本」の決定的な違いが生まれました。
富とは、所有者が自由に使える財産です。何かを買うのも、誰かにあげるのも、投資するのも所有者の意思次第です。
一方で、資本とは、会社を永続させるために投入されたエネルギーとなります。それは特定の誰かに帰属するものではなくなり、会社という法人の中に固定されます。そして資本が出資者に返還されるのは、会社が存続できなくなったとき、つまり会社が清算される時となります。
会社が続く限り、資本は会社の中に留まり続ける。この原則こそが、近代資本主義の礎となった「資本維持の原則」です。
現代の日本の会社法では、どれか一つの条文として明示されてはいませんが、会社法の根本原理のひとつとなっています。だから、資本金を減少したり、配当を剰余金以上におこなうことには、法律上の制限がかかっています。
資本とは、会社を回し続けるためのもの。出資者からの借入ではない。
セクションD-1
〜日本のデフレスパイラルから考えてみる
ここから、セクションD「会社と経済社会」が始まります。
セクションB「公益資本主義とは」、セクションC「会社と資本」で見てきたのは、個社の経営でした。付加価値をどう創り出すか。創り出した付加価値を、社中にどう分配するか。
付加価値の創出 = 分配の設計
分配の総和を増やし、新たな価値を生みだす。左右両辺を「=」でつなぎ、分配と成長の循環を描いていくことが、経営の役割でした。
セクションDでは、この話を国全体へ広げます。
これまでがミクロ経済だったのに対し、マクロ経済の話となります。
マクロ経済には、三面等価、信用創造といった、身構えたくなる言葉が並びます。難しい理論も、できるだけかみ砕いて進めますので、気軽に読み進めていきましょう。
構造をどう捉えるか。当たり前を、鵜呑みにしていないか。考えるべきポイントは、これまでと同様です。
まず、次のグラフを見てみましょう。
1995年から2025年までの30年間の推移です(1995年を100として指数化)。
雇用者数が緑です。働いている人の総数です。(統計上、役員を含む)
青と赤は、雇用者報酬の総額です。働く人に支払われる給与・賞与・退職金と、雇い主が負担する社会保険料を合わせたものです。
青は「名目」。赤は物価の上昇分を除いた「実質」での数値です。
さて、このグラフをもとに、日本の現在地を見ていきましょう。
雇用者報酬の総額から始めましょう。名目である青い線です。1995年から少しあがりますが、2002年に1995年の水準を割り込みます。一度は持ち直したものの、2009年に再び落ち込み、1995年のレベルに戻ったのは2016年。20年あまり、足踏みを続けたのです。
そこから右肩上がりが始まります。2025年は1995年比で+21.5%(速報値)。年間323兆円規模となっています。日本全体での、給与の総額はやっと増えつつあります。
次に、雇用者の総数(緑の線)を見ましょう。30年間ほぼ上昇し続けており、その数は、5,263万人から6,185万人となり、922万人増えています。
人口減少が言われ続けているのに、働く人は増え続けている。その理由は、女性と高齢者の就労増です。
女性(15〜64歳)の就業率は74.1%(2024年)。主要先進国のなかでも高い水準です。高齢者はさらに際立ちます。65〜69歳の就業率は53.6%。OECD平均(26.4%)の2倍です。70〜74歳でも35.1%、3人に1人以上が働いています。
日本は「勤労の国」。もっとも多くの人が、長く働いている国のひとつです。
残った赤い線、雇用者報酬の実質額を見ていきます。今度は、1人あたりの賃金で見てみましょう。
| 1995年との比較 | 名目 | 実質 |
|---|---|---|
| 雇用者報酬(総額) | +21.5% | +10.4% |
| 賃金(1人あたり) | +1.6% | △12.9% |
雇用者報酬の総額(名目)は増加していたものの、雇用者数も増加していました。1人あたりの賃金(毎月勤労統計)で見ると、名目でやっと1995年並み、実質では12.9%も減少しているのです。
金額では、2025年の賃金(月額・名目)は、35.6万円。この30年間でわずか6千円しか増えていません。
これに追い打ちをかけているのが、2022年以降の物価上昇です。名目賃金は伸びていますが、物価上昇に追いつかないため、実質賃金は下がり続けているのです。
その結果、およそ7人に1人(15.0%・2024年)が、貧困線(年138万円)を下回って暮らしています。
かつての中間層が、貧困化しているのが、いまの日本。
これは景気の波でなく、「デフレスパイラル」という構造の問題です。
いまの物価上昇は、賃金が押し上げたものではなく、輸入品などのコストが押し上げたものです。
物価が上がり続ける「インフレ」に対して、物価が下がるのが「デフレ」です。そのデフレが30年も続いた国は、日本だけです。なぜ、これほど長く続いてしまったのでしょうか。
その原因は、分配と成長の循環が逆回転した「デフレスパイラル」という構造にあります。

実質賃金が上がらない、もしくは下がっているとなれば、家計は節約・倹約に向かいます。安い商品やサービスなら、選ばれやすいと考えた企業は、値下げ競争に走ります。価格を上げたくても、シェアを他に取られてしまうことを恐れてしまいます。
単価は下がる中、利益をなんとか維持したい。利益の確保が経営の目的となると、何が起きるかは、すでにみてきた通りです。利益を出すために、費用は削られます。賃金は上がりません。
もちろん、社員の給与を上げるために、経営努力をしている会社も多くあります。しかし「雇用」という点で、大きな構造変化が起きてきたのです。
人件費を「投資」ではなく「コスト」と捉える経営を行うと、「人件費=固定費」という考えに立ちます。売上の上昇が見込めないとき、利益が出る体質にするには、「固定費の削減」が必要となってきます。
固定的な人件費を、変動する費用に置き換えたい。社員ではなく、契約社員、パート・アルバイトに置き換えていく。こうして、非正規雇用が拡大してきました。現在の非正規雇用者は約2,128万人で、全体の36.5%となります(2025年)。30年で、非正規は1,000万人あまり増えました。一方、正規の社員はむしろ減っています。増えた働き手は、ほぼすべて非正規だったのです。
すべての企業がもちろん同じ状況ではありません。国内や海外で、躍進する企業も多く生まれてきています。しかし、稼げる企業ほど、外国株主が多くなる傾向があります。そして、「ROE経営」や「株主との対話」が課せられていくのです。
すると、図の赤い矢印のように、外国株主への配当が増えていきます。社員への分配よりも、株主への分配が優先され、しかも海外へ流出してしまう。負のスパイラルを加速させます。
東京証券取引所ほかの「株式分布状況調査」によれば、上場企業の外国法人等の保有比率は34.7%(2025年度末時点。時価総額ベース)となり、調査開始以来の最高を更新しました。いまや外国法人等は、日本の上場株式の最大の保有主体となっています(次いで金融機関27.3%、事業法人等17.7%、個人・その他17.4%)。
原 丈人さんは、こうした状況に対して、「まず社員への分配から始めよ」と唱えます。儲かっている企業、上場している企業から始めていく、という意図です。
では、その分配が、わたしたちの社会全体にどういう影響を生み出すのか。まずは、その根本である、「経済とは何か」について、改めて考えていきましょう。
ここまでが、このセッションの冒頭です。
続きは、受講のお申込みで。
SECTION A・全10回
A-1
〜産業革命の混沌から「市場の法則」を言語化した男〜
国の富とは金銀だった時代に、スミスは「富とは生産力である」と唱えました。どういう時代だったのか、見ていきましょう。
A-2
〜市場は等価交換のはずなのに、なぜ「格差」は生まれるのか〜
資本主義の発展による、良い面と悪い面。なぜ格差は広がるのか。マルクスは「搾取は仕組みが生む」と指摘します。その正体を、見ていきましょう。
A-3
〜なぜ私たちは、このシステムに「自ら進んで」従うのか〜
20世紀に入り、社会はいまの私たちに近づきます。大きな機械のように回る様子を、ウェーバーは「鉄の檻に入る」と表しました。見ていきましょう。
A-4
1920年代末から世界は長引く恐慌で苦しみます。市場が止まった状態を変えたのは、常識の転換でした。次は、ケインズです。
A-5
1970年代、世界は不況と物価高に同時に苦しみます。フリードマンは「政府は小さくあれ」と説き、時代は新自由主義へ動きます。見ていきましょう。
A-6
資本主義によって、私たちは豊かになれたのか。200年におよぶデータからその検証に挑んだのが、ピケティです。その答えをみにいきましょう。
A-7
ノーベル経済学賞は、いつ、何のために誕生したのか。資本主義にどのような影響を与えてきたのか、その様子をみていきましょう。
A-8
リーマン・ショックを機に、経済学は「市場は万能」という当たり前を問い直しはじめます。制度や働き方へと広がる、その歩みを見ていきましょう。
A-9
資本主義の歴史を見てきて、波が繰り返してきているように感じませんか。資本主義のもつ「引力」の姿を見ていきましょう。
A-10
資本主義を世界全体でみると、その時代の「覇権国」が存在します。今のアメリカ。かつてのイギリス。世界を動かすその仕組みを見ていきます
SECTION B・全10回
B-1
〜格差と分断を乗り越えていくために
格差と分断は、資本主義の宿命なのか。抗う道を探した原 丈人さんが示したのが「公益資本主義」でした。その原点からみていきましょう。
B-2
〜目指すは付加価値の最大化と分配の設計
利益って、そもそも何のためのものでしょうか。あるいは誰の利益のことでしょうか。会社の目的である「利益」について掘り下げていきます。
B-3
〜「会社は株主のもの」思想はなぜ広まったか
会社の所有者とは誰なのか。「株主のもの」という定説を検証し、経営者の責任とは何かについてもみていきます。
B-4
〜4つの投資手法と時間軸で考える
生産性を高めるとは何か。時間や工数を減らす、という私たちが抱くイメージそのものに問いを立てます。生産性は目的か手段か、一緒に考えましょう。
B-5
〜付加価値を軸につないでいく
付加価値をどう実現し、それが分配と成長につながるのか。二つの式に具体的な数字を入れて、その設計を考えていきます。
B-6
〜中長期視点という羅針盤
公益資本主義の「実践3原則」について学びましょう。合理的な判断が、時間が経つと、なぜ不合理になるのか。まずは「中長期視点」です。
B-7
〜企業家精神を発揮するとは
実践3原則の後編は「企業家精神」です。世の中を変える大きな変化は、どこから生まれるのか。小さな違和感と、組織の「あそび」から考えます。
B-8
〜株式市場にとっての「良い会社」とは
付加価値の話から、がらりと変わって「株価」です。PBR1倍割れとは、何が問題なのか。株価は、会社の何を評価しているのかを、投資家の側から解きほぐします。
B-9
〜公益資本主義からみる3つの指標
「良い会社」と言われて、どんな会社が思い浮かびますか。公益資本主義が示す三つの指標をもとに、その基準を考えていきましょう。
B-10
〜俯瞰的な視点と、判断する軸
セクションBの最後は「経営するとは何か」です。経営するとは、何をすることか、どういう視点が必要なのかを掘り下げていきます。
SECTION C・全10回
C-1
〜財務諸表をめぐる<資本の旅>へ
セクションC「会社と資本」の最初は、そのものズバリ「資本」です。資本金は誰のものか、という素朴な問いから、財務諸表の構造をたどって、「資本」の正体をひもといていきます。
C-2
〜3つの資本・3つの市場・そして社会
会計では、人は資産や資本として計上されません。なぜでしょうか。その前提にある3つの市場、そして社会についてみていきます。
C-3
〜視点の違い・儲け方の違い
次は、投資家についてです。短期と中長期の投資家とは、どのような違いがあるのか。儲け方の違いや、視点の違いについて、みていきましょう。
C-4
〜その狙いや背景そして判断の軸
投資家の中でも、アクティビスト株主にフォーカスをあてます。その提案とは何か。どういう価値軸で行動しているのか。そうした構造をみていきます。
C-5
〜会社の成長を考える軸とは
会社の経営は、誰の責務なのか。中長期の株主と経営者の考えの違いを確かめ、社長の立場で、株主との対話に臨んでみましょう。
C-6
〜誰が、どんな基準で評価すべきか
会社の経営者の評価は、誰ができるのか。その報酬をどうやって決めていくのか。その評価の軸について、考えていきましょう。
C-7
〜イーロン・マスクとテスラの事例から
イーロン・マスクとテスラを事例に、経営者と資本の力について、みていきます。1兆ドル(約153兆円)という巨額すぎる株式報酬の根拠はどこにあるのでしょうか。
C-8
〜指標は経営目標となりうるのか
日本の上場企業に広がった「ROE 8%」。その数字は、どこから来て、なぜ経営の目標になったのでしょうか。ROEという物差しに潜むワナを、みていきます。
C-9
〜資本を買い戻したあと、何を目指すのか
研究開発費を上回る規模に膨らんだ自社株買い。買い戻した株式は、そのあとどうなるのでしょうか。資本として活かす道を、見ていきましょう。
C-10
〜人が資本であることの本質とは何か
人的資本経営と聞くと、なんか良さそうに感じてしまいます。しかし、問うべきは「人=資本」とは、どういうことか。一緒に考えていきましょう。
SECTION D・全10回
D-1
〜日本のデフレスパイラルから考えてみる
経済が回る、とはどういう状況か。三つの側面からGDPをみていくことで、その構造を明らかにしていきましょう。
D-2
〜貨幣はどこで生まれ、どう流れるのか
貨幣とは、日銀が刷っているものだけではありません。銀行の貸付と同時に生まれます。お金の量と経済の動きについて、見ていきます。
D-3
〜価格が決まるメカニズムとは
円の値段は、誰が決めているのか。1日1,500兆円が動く為替市場から、円安のしくみ、そして金利の世界を見ていきます。
D-4
〜資金調達と株主還元の現在地
株式市場とは、資金を集めるための場。そう思われてきた前提が大きく変わっています。還元額が調達の30倍もある市場での上場の意味を考えます。
D-5
〜社会の課題を構造的に解きほぐしていく
出生率1.14、医療費48兆円。少子化と高齢化の問題の根っこにあるのは、働き方の構造です。複雑な少子高齢化の問題をひもといていきましょう。
D-6
〜右肩下がりを前提に、付加価値を考える
日本の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに減り始めました。2050年には、ピークの8割へ。右肩下がりを前提に、経済と地域の豊かさをどう設計するかを考えます。
D-7
〜世代をまたぐ時間軸で捉える
インフラは、30年、50年、100年単位の投資です。世界で公共事業を減らしてきたのは、日本だけ。インフラに関する課題について、考えていきましょう。
D-8
〜国民の豊かさを生む、経済の基幹システム
基幹産業とは、国の経済と社会の骨格です。基幹産業とは何か。これからの日本の基幹産業とは何か、についてみていきましょう。
D-9
〜失敗と成功を分けるものは何か
人が空を飛ぶのは無理だ。そう言われた挑戦も、失敗の積み重ねの先に実現しました。AI時代の、学びの循環について、考えていきましょう。
D-10
〜資産と資本で捉えなおしてみる
国の富とは、何か。統計に表れる国富と、表れない人の時間と技能。資産と資本の両面から、国の富を捉えなおしていきましょう。
受講のご案内
自分の利益だけではなく、
公益とは何か。
資本主義を
どうやって使っていくのか。
自分の言葉で語れる自分へ。
動画ではなく、テキスト形式の講座です。スマホでも、通勤の合間でも、自分のペースで進められます。
読んで考えたことを、AIと壁打ちしながら、自分の言葉にしていきます。
公益資本主義を学んでいくことで、会社や経営、経済や社会を、構造的に捉える視点を身につけます。
未来の社会を考えていくための、思考と判断の軸を磨いていきます。
5,500円(税込)
受講期間は、受講料の決済日から3ヶ月となります。